CAMUIロケット打ち上げ後の記者会見 2007年8月4日9時
打ち上げ後に行われた記者会見の内容をメモすることが出来たので、記載します。
植松専務による今回のCAMUIロケット打ち上げについての記者会見
・打ち上げについて
7時33分に打ち上げに成功した。ロケットは約3500mまで到達した。この高度は予定よりも少し低いものになっているがこの理由は万一陸地に落ちてこないように海に向けて寝かせて打ったため。今回の実験目的は「ロケットに制御をかける」こと。北海道工業大学の小型衛星HIT-SATの技術でテレメトリの取得とロケットの制御を行うことに成功した。地上からの指示でパラシュートを広げた。
従来のロケットでは高度が高い地点でパラシュートを広げたが、この方法だと風に乗って落ちるまでに水平方向に移動するのでどこに落ちるかが分からず探すのが大変であった。海面近くでパラシュートを広げることが出来るようになったのは大きい。
高度300mまではビーコンを拾えたが、着水時にビーコンが消失した。1時間半たってビーコンが消える時間が来ても回収できなかったため回収を断念した。
今回は船を出してくれたことに感謝したい。そのおかげで打ち上げを実施することが出来た。今回は天気が悪かったのでセスナを飛ばせなかったが、もしセスナが出せたならばロケットに搭載したシーマーカーを見て回収できたのではないかと思う。
今回の実験ではロケットの制御に成功したのがよいことである。
今後の改善点としては、今回はアビオニクスが重くなったがこれはもっと軽くすることが出来る。また(着水の衝撃で今回は壊れてしまったと思うので)丈夫なアビオニクスにしたい。
-ここで無線で取得したロケット搭載のカメラの映像をプロジェクターで上映する。ランチャーから飛び立ってしばらくしてノイズで映像が途絶える-
このように「動画」という重たいデータを無線で送って取得することに成功した。
・以下、質疑応答
Q 位置や高度などのデータを取得したが、他にえられたデータは何か
A 気体の空力加熱を見るために温度を測っている。その他、加速度、GPSによる緯度経度情報、気圧。データ解析は一週間はかからないだろうが一日はかかる。データは後日公開する。
Q 音速は突破したのか
A 「バンバン」と音がしたからどうかな? まだ分からない。
Q パラシュート展開の指示を出したのか
A 出した。
Q 高度3500mには何秒後に到達したのか
A データを解析してみないと分からない。
Q 今回の実験は成功といえるか
A 大成功です。アンテナが機能してデータが取れた。今まではエンジンに羽根をつけて飛ばしただけ。
Q 回収できなかったのはロケットの前・後どっちか
A 両方とも回収できなかった。出来れば先端部分を回収したかった。
Q ロケット開発のゴールは
A 小型衛星の軌道投入。ただ、ゴールというものはない。軌道投入が出来るようになればもっと欲が出て先を目指す。CAMUIロケットの功績は人が育つこと。「手の届かない技術」にはしたくない。今回見学に来てくれた子供達が10年後に仲間になってくれたらよいと思う。
Q 見に来た人は何人か
A 113人。こんな不便な場所によくきてくれたと思う
Q 衛星投入に必要な高度は
A 高度ではなく速度が7.9km/s。ただそのためには多段にすることや姿勢制御技術をする必要がある。だがそれはやれば出来ること。昔に日本でやったことだ。それが今は「できない」と思われていることが寂しい。一歩一歩やっていきたい。アメリカのアポロ計画では計算尺が使われていた。それに対して今の我々は高性能のコンピューターで何をやっている? 昔の人に負けているのではないか。
Q 次のステップは
A アビオニクスを向上させること。機体を軽くするのはそれほど難しくはない。今回のデータを見れば強度計算が出来てぎりぎりまで軽くすることが出来る。この強度のデータは計算などのほかの方法では取れない。実際にやってみて初めてデータを得ることが出来た。
Q 次は何をしていつやる
A まず軽くする。アビオニクスを着水の衝撃でも壊れないようにする。すぐにやりたい。今回のロケットはアメリカのアリゾナで行われているCANSATをあげるロケットと同じレベルのもの。CAMUIロケットが高度4kmまで上がるようになれば、アメリカまで行かなくても日本でCANSATが出来るようになる。CAMUIロケットの最初の仕事はCANSATを上げられるロケットになることではないか。
Q 発射から着水まではどのくらいの時間がかかったか
A 75秒。
Q 小型衛星を載せるためには今回は大きな前進か
A 前進だ。(衛星の前段階である)CANSATが増えればそれは小型衛星につながる。またロケット作りもやれば出来るという意識になった。衛星までは早くても10年かかる。その間に人を育てたい。
Q 永田先生は10年ではなく5年と言っていたが
A じゃあ5年(笑)。出来ると思えば出来る。一番の問題は宇宙法。小型衛星は部品が動くかどうかをテストするだけでも価値がある。衛星では「その部品が動くの?」といわれるのが一番つらい。動作テストが出来ればこの問題が解消される。北海道は人口密度が少ないというロケット開発に適したメリットを持っている。それを生かすべきだ。
-ここで永田教授が戻ってくる。以下、植松専務に代わって永田教授が質疑応答に答える-
永田:モーターの性能としてはいいものが出来た。今日はじめてロケットを見たがとても美しかった。すぐに海に消えてしまったが。ロケットは上に上がりたがっているもの。今までずっと地上で燃やしていてストレスがたまっていたのではないかと思う。今回空に上げられて、(ロケットのために)よかった。回収できなかったのが残念だが、改良して次は回収する。
Q 今からでも回収は出来ないか
A バッテリーがなくなっている時間なので回収したとしてもデータが全て消えている。出来れば回収して無線で送ってきたロケット搭載カメラの映像の続きを見たかった。
今回は全国からいろいろな人が来てくれて本当にありがたい。結局何人来た? 113人? この人たちは勇者ですね。
これは決定ではないが、年度内にもう一回打ち上げをやりたいと思っている。
- 2007/08/05
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