コラム:宇宙実験の最前線に来て思うこと
CAMUIロケットの打ち上げを見ていて思った。この北海道大学工学の宇宙工学セクションは、本気で宇宙を目指しているのだなと。このCAMUIロケットは小型衛星の軌道投入をおそらくは本気で狙っているロケットである。そして、今回ちょっとだけ間近で見ていて「これはマジでやっている」ということを強く感じた。そしてそれと同時に、「宇宙が射程に入っている」ということも感じた。うまくやったならば本当に軌道まで衛星を運べるようになるんじゃないかと、横で見ていた私ですら感じたのである。
小型の衛星投入が実用化したならば、私がテーマとしている微小重力実験だって進むに違いがないのである。ロケットの弾道飛行を利用した微小重力実験で、これまでの実験では6分間くらいの実験ができていた。このCAMUIロケットが実用化されたのならば、ロケットでの微小重力実験をする機会だって増えるのではないだろうか。
それに、北海道には落下塔が本当にあるのである。それも私が今いる研究室は本当にごくごく普通のこととして、この稀有な実験装置を贅沢に使いまくっている。
現在は完成すら確実性がなく、できたとしてもお金がかかる割りに結果が出ないんじゃないかと、国際宇宙ステーションは言われている。だが、宇宙ステーションは現在作っていて、そうしてできたとしたのならば、実験をするのである。そうなったならば、まさに私が価値のある実験を提唱して、実際にやって、そうして宇宙実験のすごさというものを世界に対して示さなくてはならないのである。それが今の私の使命ではないかと、そんなことを思っている。
宇宙というのは、今まで自分とはほとんどまったく無縁なものだと、最近まで思っていた。だが、ロケットの打ち上げを見ていて、このロケットが宇宙を本気で射程に収めているのを目の前でみて、「北海道には宇宙が手の届くものとして存在しているのである」ということを本気で思うようになり、衝撃を受けた。
今までは「宇宙なんてどうせ無理だろう」とどこかあきらめていたところがあった。だが今は「ひょっとすると、本気で仕掛けたらやればできちゃうんじゃないのか?」ということを思うことができるようになったのである。
私はそれが信じられない。冗談ではなく、本当に宇宙に手が届く、そんな位置につけているのである。私は考えれば考えるほどに、このことが信じられないほどにすごいことだと本当に驚愕している。
いったいなぜ俺はここにいるのだろう? それも信じられない。俺なんかがこんなところにいてよいのだろうか、という疑問をどうしても感じてしまう。俺が今いるここは、宇宙開発の最前線なのである。ものすごいところにいるのである。何で俺なんかがこんなところにいるのだろう。そんなことも思えてならない。
とにかく、何かをしなくてはならないと思う。とりあえず、事実上落下塔を好きなだけ使ってよいという信じられない破格の条件の研究室にいるのである。そして隣の研究室では本当に宇宙に届くかもしれないロケットを本気で作っているのである。いったい俺は何をするべきか。とにかく、微小重力実験をしっかりとやらなくてはならないと思う。落下塔をしっかりと使って、そうして、やがてできるはずの国際宇宙ステーションを使って、何かすごいことをやってのける、という、そんなことをやらなくてはならないのである。それが私の使命なのだと思う。そして、そんなことが本当にできるかもしれないポジションに俺はいるのである。
隣の研究室のCAMUIロケットで、弾道飛行の微小重力実験ができるようになったら、これはもうすごいことである。これだってできることを想定して、できたときに価値ある実験ができるようにあらかじめ準備をしておいたほうがよいんじゃないかと思う。
実験に使える手段はどんどんとすごいものができてくるに違いがないのである。だったらそのときにあわてないで使いこなせるだけの研究者になることが第一目標であると思う。
やりたいことや、やらなくてはならないことが本当にたくさんある。こんな風になるとは北海道に来る前はまったく想像していなかった。大して能力がなくって思ったように仕事ができないのが本当につらいが、なんとかがんばって、この信じられないほどに恵まれた環境を無駄にしないようにしなければいけない。
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- 2007/08/08
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