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「華氏451度」を読み終わった

 本を燃やす話。本の所持が非合法である社会において、本を隠し持っている人間の家を燃やす仕事(隠していた住人は警察があらかじめ逮捕しておく)をしている主人公がふと本を隠し持って読むようになって、というストーリー。「1984年」と並ぶディスユートピア小説として名前だけ知っていたので読んでみた。というか、これを100円で売ってくれたブックオフ100円コーナーは本当に偉大だ。


 この前に読んだ「1984年」同様にすごく考えさせられる作品だった。「本」はそこまで危険なものなのか? ということを現在の日本に住んでいると思えてしまって仕方がない。のだが、焚書や、発禁処分といったことはかつての日本でも、そして世界のあちこちで本当に行われてきたことだ。そして現在の世界においても言論の自由が存在しないところなんていくらでもあるだろう。そういうことを考えると、「本を所有することが犯罪行為」というこの小説の基本設定があながち荒唐無稽ではない、ということを考えて、実に考えさせられる。

「1984年」はそこらじゅうに監視カメラが仕掛けてあって、「偉大な兄弟」という明らかな敵が目に見えて描かれていた・主人公が「日記」を書くことの危険性がありありと伝わってきた。だが「華氏451度」では独裁国家(というか近未来のアメリカなのだが)が目に見えては描かれない。ごくごく日常的なこととして主人公は本を家ごと燃やしているし、本を隠し持つシーンでもそれがどんだけ危険なことであるのかというのがイメージすることができなかった。
 それゆえに、主人公が「本を隠し持った犯罪者の家」として自分の家を燃やすシーンにきて「あっ」と思った。

 私はどうしても「1984年」との比較で読んでしまったが、あっちはまったく持って救いのない、だがそれゆえに迫力のあるラストであったが、「華氏451度」のラストはなんかちっとぬるい感じがした。いや、悪くはない。だがなんか歯切れの悪いというか、すっきりしないラストだった。

 個人的には割りと読みやすい小説だったのでよかったと思う。分量的にも文庫で300ページくらいでそんなめちゃくちゃ長くはないし、最後のなんか生ぬるい歯切れの悪さを除けば展開もそれほどかったるくないので結構さっさと読むことができた。

「1984年」と続けて読んでみて(あとは「夏への扉」も読んだか)、SF小説というのが、フィクションを描いているものでありながらも、リアルの現在について考えさせる、触媒のような作用を示しているなと感じた。読んでいて、描かれているのがまったくの嘘っぱちでありながらも「このストーリーと比較して、そういえばこの現実の世界って、どーよ」と思えて仕方がなかった。

 SFってすごい。そう思うようになった。それと同時に、私はどうしても自然科学に興味があるので科学技術の視点で世界を見てしまうのだが、文学的なものの見方というものもあるらしいとうすうす思うようになって、そっちにも多少の関心を感じる。たぶん世界の見え方がまるで違っているんじゃないかと思う。

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